白銀のカルマ

「先生、お話って何でしょう?」

「あの……ひとつお話が……」

「実は、私も先生にお話ししたいことがありまして……」

「?」

 後日、母親にこれを機会に、例のあの件について伝えようとしたのだが、奇しくも彼女の方も医師に相談したいことがあったようだ。

喉まで出てきかけていた話を封印し、クライアントの相談を優先した。

「……先生ももうお気づきでしょうけど、息子の中には〝あの子″がいるんです……」

「え……?どういうことでしょう?」

水森がこのことを理解しているのを前提に、話を進めようとしたが、この言葉を初めて聞いた時、何が言いたいのか全く意味が分からなかった。

戸惑う水森を無視するかのように、鞄の中から茶封筒を取り出すと、さっきまでの話題とは全く関係のない自身の生い立ちついて話し始めた。

「無関係の長話はご遠慮いただけます」と、あまり時間がないことを遠まわしに強調したが、幹枝は一切聞く耳を持とうとしない。

「ここから話さないと説明するのは無理なんです」

話題が飛び過ぎたせいで今回の相談と出生の関連性を掴めなかったが、母親の〝過去″を辿らないことには、この親子が直面する本当の問題が浮き彫りになることはなかった。