白銀のカルマ

「…僕は母にとても感謝しています。僕が目の病気で視力を失いそうになった時は必死にドナーを探してくれて…
それ以外の時だっていつも僕を支えてくれた。ピアノの才能に関しても……いつも信じてくれて……。そのサポートが
あったからこそ、今の僕があります」

「………うん」

「………でも、お母さんと一緒にいたら胸が………」

「……胸が……?」

「……苦しくなるようになりました……」

「………それは………どんな風に………?」

「キューっと締め付けられるような………そんな感覚がたびたびあります」

「それは最近でもあるのかな……?それは」

「………はい、たまに」

稲倉の供述内容はあながち嘘ではなかった。

息子を一番支配していたのは母と言っても過言ではなかった。

元々欲しい物を全部手にしないと気が済まない性分である幹枝は、年を取るごとにそう言った〝こだわり″は理性で
抑えられるようになっていたが、たまにそういう部分がひょっこり顔を出し、その都度息子を苦しめていた。

「………。」

それを聞いた水森は、顎に手を当て暫く熟考した。

この場合、息子より母親の方が治療を受けるべきじゃないのか。

息子は悲惨な事件に巻き込まれながらも、自身の生い立ちや現状を冷静に客観視出来ている。

それが出来ていないのはどう見ても母親の方だ。

後日、母だけを診察室に呼びその旨を伝えてみることにしたのだが、思わぬ方向へ展開していく。