白銀のカルマ

【あなたといた時間は本当に楽しくて幸せなことばかりだった。

おそらく結婚したら私が淹れた紅茶とお義母さんが作ったお菓子そしてあなたが奏でる音楽でこの世にある寂しさや悲しいことなんて一瞬でも忘れてしまえたのでしょう。

どれだけ幸せで楽しくて、日々の寂しさや悲しさをかき消しても、私があなたに相応しくないのは確か。

何度も相応しい存在でいようとしたけど、それは難しかった。

他に望むことはないけれど、あなたには自分の想いに正直でいて欲しい。

優一さん今まで本当にありがとう。】

『……優一。聞いて。千沙子さんがね……』

『………?』

『あなたとの結婚を破談にしたいそうなの。それでこれ……』

母と仲介人の昇さんにだけ詳しい説明をして僕には何も告げず手紙だけを残して去っていった。

僕に代わって手紙の全文を読み上げる母。

一文字一文字に思いが詰まったその手紙を母が全文読み終えた頃には、僕の目には涙が溢れ止まらなくなっていた。

『……ふぐっ……』

母は泣きじゃくる僕を何も言わず抱き寄せた。

彼女と別れたことを後悔してるわけでも悲しいわけでもない。

これも互いが幸せになるために必要な決断だったのだと納得している。

でもあの日のことを思い出すと涙が溢れて止まらなくなる感覚が今でもあるのだ。