白銀のカルマ

【今犯人を乗せた車が拘置所から出てきました!】

「兄さん!兄さん!」

青年の走るペースを落ちるどころか、どんどん加速していく。

車内にいる兄には声は届いてないはずだった。

けれど弟の熱い思いを汲み取るかのように、後ろをふりむくと必死に追いかける弟に優しく微笑んだ。

「……兄さん……」

全てを諦めたように微笑んだ兄を見た瞬間、自分が今まで抱いて来た印象は大きく異なっていたことに気づいた。

これは単なる思い過ごしでも何でもなく出廷する度、今まで兄を歪めて見ていたことを思い知り恥すら覚えるほどだった。

"仲良くなりたい"

こんな図々しいことを思っていたわけではなかったが、自分の送った手紙が返ってくることを心待ちにしている自分は確かにいた。

けれど回数を重ねるうちに、淡い期待は次第に叶わないものだと知り落胆した。

父と死別、兄ともほぼ絶縁状態。

皮肉にも証人として出廷した母と20年ぶりに再会し、それ以降頻繁に連絡を取り合うようになった。

失われた時間を必死で取り戻そうとしている親子は、兄が刑期を終え予定通り出所することについて嬉しそうに語らい合ったが、おそらく兄が自分達の目の前に姿を現すことは二度とないと何となく分かっていたためか、通話終了後、肩を落とし大きなため息をついた。