白銀のカルマ

「最後に一つお聞きしていいですか?」

「……なんだ。まだあるのか」

警察に通報され、殺気立つ樋渡にとある質問をぶつける英。

「あなたの〝お父様″は滝川健正元院長ですよね?」

「……」

自身の出生は、自分しか知らないつもりでいた。

血を分ける幹枝ですら、今の今まで知らなかったような事実をいとも簡単に言い当てられ、狼狽する樋渡。

樋渡の恋人であるホステスから聞いたとのことだが、ほとんど口外していないことを調べ上げるその調査力や執念に感服したのか、あっさりその事実を認めた。

「…そうさ、文句あるか?」

隠蔽殺人を繰り返してきた樋渡は、滝川健正の実子だったのだ。

しかし、母と子は健正の都合で認知されず貧乏生活を強いられる。

口惜しさを糧に努力を重ね、薬剤師となり、父の病院で働き始める。

何とかして認められようと不都合な存在を始末する役割に自ら買って出たが、院長が自分に興味を抱くことはなかった。

「………気づけば俺はあいつに認められることなんてすっかり忘れてあいつがいかに苦しんで死ぬか、それにしか興味はなくなってたよ」

政界や警察を味方につけ病院を大きくしようと企んでいた元院長。

強者だけしか認めず弱者を蔑み、行く手を阻む邪魔者は誰が相手でも容赦なく息の根を止めた。

しかし、そんな男の勢いも篤彦が医者になってすぐ嘘のように消え失せた。

認知症が始まったのだ。

それからと言うもの、深夜徘徊を繰り返しながら糞尿をまき散らし、誰もいない壁に向かって一人死ぬまで叫び続けた。

〝ごめんなさい!ごめんなさい!許じでぐれぇ……″

「……何が見えてたかは知る由はないが、拘束衣を付けられて謝罪してたのは傑作だったな……ありゃ、今まで殺したり傷つけた奴の怨霊でも見えてたんだろう。まぁ、そんなことはどうでも良いさ。あいつのみっともない死に顔を見届けられただけでも自分の人生に悔いはない。いつ死刑になったっていいんだよ、俺はよ」