白銀のカルマ

「……後は解剖医に頼んで事故死として処理させたよ」

19年前も同じ手口で不都合な人物を殺害した上で、更にカルテの改竄まで行っていたことを暴露したが、反省の色が全く見受けられなかった。

内部告発がないようせっかく脇を固めてきたと言うのに、余計なことをする野次馬のせいで何度も窮地に立たされたことを不満そうに嘆くだけだった。

「……まさか……」

その次の瞬間、千明の体が震え始める。

何度も忘却しようとしたあの壮絶な〝過去″。

7歳の頃の朧げな記憶が鮮明に蘇った。

屋敷の離れで静かに暮らしていた叔母・優莉花は、ある日突然、手首を切り自殺を図った。

しかし、何故こんな事に及んだのか今でも理由は不明のままだった。

『……おばあちゃんと一緒にいましょうね』

『うん…』

千明は祖母に連れられ屋敷のリビングへ戻ったが、救急車が到着するまでの間、母と篤彦の叔母の名前を呼ぶ声だけが響き渡った。

意識があるうちに救急搬送されたものの、結局叔母は搬送先で息を引き取った。

「………あの、まさか………うちの叔母も……」

「叔母?」

「滝川恵莉花の妹の優莉花のことなんですが……」

「あ?優莉花?……あぁ、篤彦の義理の妹な。聞いたことはあるが、俺はあいつを殺してなんかいないぞ。〝お前が余計なことをすれば、大好きな姉ちゃんも兄ちゃんが傷つくことになるぞ″って言ったが、あいつが勝手に死んだ。俺は何もやってない。」

「……俺は何もやってない、って……」

「……そんなこと言い始めたら、あいつは皆のモルモットだろ」

「は?」

「去勢手術はあの時代、強制だったからな…。仕方ねぇよ」

時代自体がそういう風潮にあったとは言え、樋渡は完全に命を軽視していた。

その姿に千明は、今まで感じたことのないような激しい怒りを覚えた。

殺意も芽生えたが、暴力では何の解決にもならないと、固く握ったその拳を緩めた。

千明は一歩手前で踏みとどまったものの、やはりこの人は黙っていなかった。

「あんたのこと絶対に許さない!地獄に落ちるべきだわ!!」

自分勝手な言い分に怒りが抑えられなくなった幹枝は、再び掴みかかろうとしたが、樋渡の思わぬ一言でその場は再び凍り付く。