白銀のカルマ

『………ッ!?』

ジャバッ、ジャバッ、ジャバッ………。

この日も同じ雨降りの日だった。

彼女は黄泉の世界へ行こうと向こう岸へ向かっていた。

溺れている人がいるから助けるのは当然だ。

でもそれだけじゃなかった。

そんなことを二度と思わせないくらい君を幸せにしたいとその時心に決めた。

『香織!!戻れ!!』

俺は普段部活で腹から声を出していたつもりだったがその時程声を出したことは後にも先にもない。

服のまま川に飛び込むと自ら三途の川を渡ろうとする幼い香織を羽交い絞めにして何とか止めた。

『香織!!やめろ!!』

「………あなたっ………!?」

あの時と同じように呼び止められた香織は驚いて後ろを振り返る。

後少しで川に入る寸前だった香織の腕を掴み何とか最悪の事態は免れた。

昇はそっと胸を撫でおろした。

「……どこに行こうとしてたんだよ、まったく。……ママまでいなくなったらこれからどうしたらいいんだよ」

「……本当皆勝手よ……」

「?」

「いや、もう皆自分勝手で嫌になっちゃう…。許したくないのに『許せ』って言ったり、どこかに行きたいのに『行くな』って言ったり…もう、本当うんざりよ…」

「ママ…」

「でもね、もう分かってるの、全部…」

昇は土砂降りの雨の中、香織をそっと抱きしめる。

その瞬間、香織の目から涙が流れ落ちた。

………本当はずっと分かってた。

父が私達をずっと愛してくれていたことも。

けど私達といたら心に余裕がなかった。

心安らかにいられるのはもう一つの家族だけだった。

でもその事実を受け入れず拒み続けた。

初めて私が父の思いを知ったのは14歳の頃。

父の書斎の引き出しで見つけた手紙で知った。

【香織へ】

10歳のお誕生日おめでとう。

成人式まで後10年。半分が過ぎたね。

父さんはお仕事が忙しくてなかなか香織にかまってやれることもできないだろうから、先にお手紙も先に書いておきます。

香織が生まれた日、雪が降ってた。

正直コート一枚ではとても寒くてどうしようもなかったんだけど、一番頑張ってるのはママと香織だと思うとそんなこと言ってられなかったよ。

産まれたばかりの小さい香織を抱っこした時、本当に涙が溢れたよ。

この子は一体どんな人生を歩むんだろう?

地位や名誉なんてちっぽけに思える位、幸せな人生だったら良いな。