白銀のカルマ

「……ううん。何となく分かってた。」

間を置いてからゆっくり頷くと穏やかな笑顔で母の言葉を肯定した。

相当胸が悪いだろうとあえて父の話を避けて通ってきた母。

自分が生きているうちに娘とこの話題で穏やかに話せる日は一生来ないと思っていたがそれは現実の物となった。

「………一人で背負い過ぎたのよね。そうよね?」

「………そうね。抱え込み過ぎたのよね」

しかも娘が抱く父の印象は正しかった。

和歌子は娘の言葉を聞くと安心したような笑みを浮かべ眠るように天国へと旅立った。

あれだけ苦しめられてきたのにそれでも最期は全てを許し受け入れた母の姿は本当に立派だった。

あんな病院に嫁がなければただの良家の娘だった母は次期院長の妻となったことで男の子を産む使命を課せられた。

想像を絶するような苦しい不妊治療の果てに生まれた私はせめて自分が男だったら良かったのにと何度も責めたが必要以上に負い目に感じたり否定したりしないように育ててくれた。

「……お母さん……ゆっくり休んでね」

香織は氷のように冷たくなった母の手をいつまでも握り続けた。