白銀のカルマ

「……姉さん」

「……竜太郎くん。母さんは?」

翌朝、長年疎遠になっていた義弟の竜太郎と再会した香織。

姉弟で分担して母の介護をしていたほぼ他人同然の弟に実家の和室に通されることになった。

「……母さん。」

和室に入るなり床に臥せる母の姿が飛び込んできた。

この頃カルチャーセンターでの仕事やら奥野親子の身の回りのケアなど様々な用が立て込んでいたので母と会ったのは5か月前だったが以前と比べ布団を被っていても分かるほどやせ細っていた。

糸のような細い目で天井を見つめる母はつい最近容体が急変し義理の息子が暮らす自宅に帰されることになった。

「………母さん、分かる?私よ、香織よ」

「………香……織」

息絶え絶えの母の手を握る香織。
その感触に気づいてもわずかに首を横に傾ける程度で視線はほとんど合わなかった。

「………ヒュー、ヒュー」

どこからともなく息が漏れる音がした。

もうかなり弱っている。

今何か喋らないと自分の思いを伝えるチャンスが二度と巡ってこないかもしれない。

必死で言葉を絞り出そうとしたがこういう時に限って何も浮かばない。