白銀のカルマ

私が生まれた43年前の聖なる夜の日も父は遺体処理をしていたのだと言う。

当然この目で確認したわけではない。

彼が書き残した文章から100%想像したものだが
あの日も血だらけになった手を洗い衣服を脱ぎ捨てると雪山に出たのだろう。

幼い頃から家族で休暇を楽しんだ別荘の庭の土をスコップで掘り起こすとその大きな穴に冷たくなった遺骨を埋める。

自分は今日もまた名もなき誰かの尊い命を奪いゴミのように捨てた。

『はぁあああ……』

男は空を仰ぎ息を吐く。

白い息は天に舞い頭上には綺麗な粉雪が舞った。
血に染まり漆黒の闇に囚われて逃げられない自分に惜しみなく降り注いだ。

………雪が全てを覆い隠しそれが融けようとも消えることのない罪。

洗い流されない穢れ。

『……急がないと……』

彼は遺体を雪山に埋めている時も幼い自分と姉で走り回ったあの童心が蘇る。

戻れるものならあの時に戻りたい。

叶うことのない願いは何度も何度も正徳を支配したが、全てを失うことに比べればあっさり棄却することが出来た。

遺品を燃やし遺体を埋めた後、車を飛ばしある場所へ向かった。

「………」

よりにもよって向かった先が私達が入院していた産婦人科なのだろうか。

あまりにも皮肉過ぎて口にすることさえも躊躇したくなる。

今までは幹枝と優一の親子関係が気がかりだったが今は止めどないこの鬱憤が一番煩わしかった。