白銀のカルマ

とうとう母が……。

帰りの夜行バスの車内で母が危篤状態であると言う連絡を受けた時、〝覚悟はしていた″と必死で平静を装ったが夫と対面した途端、あの時の自分の虚勢には呆れ返るものがあった。

覚悟なんて全然出来ていなかった。

私が高校の頃、母は子持ちの男性と再婚した。

私の中で『何かを得ればいつか失う』という概念があったのだろう。

連れ子である私と実子である弟のことを分け隔てなく慈しんできてくれたが結局最期まで義父との間にも壁を作ってしまう私がいた。

家族との貴重な思い出にすらどこか陰りがあるのは条件反射であの人の顔が浮かんでしまうのが原因なのだと一人で胸を悪くしていた時だった。

「あ。ところで優一くんは見つかったかい?」
「え?優一くん?」

突然ネガテイブな思考を切り裂くような質問がボールのようにこちらに飛んで来た。

一旦暗い過去に蓋をし優一の所在について答える香織。

見つかったという知らせを何でもっと早く言ってくれなかったんだと肩を落としながらも歓喜したが依然として暗い妻の声色にこれもまた良い知らせとは程遠い物であると察した。