白銀のカルマ

「……体調はどうかしら?」

「……えぇ。まぁまぁかしら」

「…そうよかった。さっきね、特売だったから桃を買ってきたの。桃好きだったでしょ?」

自分の好物を持って見舞いに来てくれたと言うのにいつになくしかめっ面で不機嫌な幹枝は自分を気遣ってくれる香織にさえふてぶてしい口を聞いた。

「……優一は?」

「え?」

「ひょっとしてまだ、見つかってないの?」

この一言で香織の目は激しく泳いだ。

実は夫が墓参りから帰ってくるまでの間、香織はとある行動を取っていた。

何か知っていることはないか優一のかかりつけの病院を訪ねていたのだ。

生憎この日は病院に医師はいなかったのだがチャイムに応答したのは例の人物だった。

『……かっ、香織おばさん……!?』

『……お久しぶり、優一くん。ここにいたのね。探したわ。帰りましょう。幹枝さんが待ってる』

香織は『お母さんがあなたを探し回っている』とチャイム越しに必死で説得したが優一はそれを一向に聞き入れることはなかった。

『……僕は母の所にはもう二度と戻りたくない……』

「嘘よね?」

「え、えぇ、まだ……」

二人の苦しみを十分理解しているつもりだ。

家族の存在が重荷になったのが原因で娘の舞香が行方を晦ました時と同じく優一も両親の対応に何らかの不備があったことでこのような行動を取ってしまっていることを理解しているが焦ってしまう幹枝の心理も人の親として十分理解できた。

完全に息子と母の間で板挟み状態となってしまった香織。

「………はぁ。」

大きなため息をついて顔を抑え首を振る幹枝のあまりの落ち込み様に負い目を感じたが何も言わず桃を剥くことに没頭し無視を続けた。

しかし罪人を見るような軽蔑の目は想像以上に苦しかった。