白銀のカルマ

平衡感覚を失うほど疲弊してしまったのだろう。

咄嗟に体を支えたため後頭部や背中を強打する最悪の事態は免れたが勢いよく後ろにひっくり返りそうになった時は流石の水森も肝を冷やした。

「…ちょっと頑張りすぎたのかな」

「…えぇ少し意識が…今も朦朧としています」

今後の治療に生かせる情報を多く引き出せたが催眠状態での証言を誰も信じまい。

それにクライアントの体に大きく負担がかかる方法なので気安く出来る手法ではなかった。

「ごめんなさい……途中で疲れてしまって」

「……いや、十分君は頑張ったよ」

「また体調が戻ったらいつでも協力しますので」
「…恩に着るよ。ありがとう」

今日は早めに休養を取ってもらうつもりでいたがその日の夜は異常なまでに寝苦しかった。

ザーッ。ザーッ。ザーッ。

降りやまない雨に加え外では雷が鳴っていた。
近くに落ちるのではないかとはらはらしていたがこういう時に限って嫌な予感は的中し近所の電信柱に落ちた。

「……先生っ、先生っ……!!!」

暗闇の中、パニック状態に陥った優一が必死で水森を探す声。

慌てて寝室へ駆け込むと真っ暗な部屋で一人優一が怯えていた。