白銀のカルマ

かつて愛していた相手を避けなければならないことがどれだけ地獄か。

だから子どものような無邪気さがどれだけ羨ましくて仕方なかった。

『おじちゃん、絵本読んでー』
『いいよー、何読むー???』

読みたい本を数冊持って絵本の読み聞かせをせがむ息子。

………子供はいいな。何の葛藤もないから。

二人しかいなかったらろくに会話も出来ず気まずいだけで終わっていたかもしれないが子どもと言う存在を通して関わったことでこれまでの蟠りが少し解消されたような気がする。

息子にとって良い『おじさん』。

おじさんを慕う息子の母。

そういう関係のまま奇妙な共同生活が一か月が経とうとしていた。

その日はたまたま美鈴さんが家を空けていた。

『母さんは?』
『奥さんは今、お出かけに』
『……そう』

昨夜も仕事が忙しかったのだろうか彼が起きてきたのはお昼過ぎだった。

だけど彼はどれだけ疲れていても皿洗いしていた私の横に立ち『手伝うよ』と言ってくれた。

さすがに私もこれにはびっくりした。

今までろくに目を合わそうともしない失礼な私を気遣って皿洗いを半分やると言い出したのだ。

あからさまに避けていたのは今も昔も私だったが彼はその垣根を飛び越えようと努力してくれた。