家に入るとそこは決していい家とは言えないが案外住み心地の悪い場所ではなく普通にそこそこくつろぐ事が出来た。家の中には獣臭が漂っていたが自然の泥や植物や炭やらなんやらの匂いが色々入り交じって不思議と緩和されていた。そして早速村の人々は「取っておきの料理振る舞うべ」と張り切って料理に取り掛かってくれていた。実はこの元気な村人に奥さんがいることを家に入って初めて知った。そして僕はふと紗良ちゃんの事を思い出し涙がこぼれそうになった。(ここが天国じゃないなら夢を見てる可能性もある。でも実際トラックに轢かれた直後に意識が飛んだから死んだ可能性もまだ捨て切れない。何よりもう死んだのなら嘆いても意味は無いのだがやはり紗良ちゃんや光輝や拓己にいつしか忘れられてしまうのではないかと思ってしまう。)そんな恐れがいきなり湧き始めた。そんなことを考え物思いにふけっているうちに「おい、おめぇそんなもの難しそうな顔してどうしたんだべか。料理出来たべよ。」と村人の声が聞こえた。「はいはーいってハッ!」ぼーっとしていた俺に村人が薄ら笑いを浮かべ「おめぇ疲れてんのか。なら今日はここに泊まってゆっくり休めばいいべ。」僕はここが正確にどこかもわかっていないのにこんな場所でゆったり時間を消費してしまって良いのかと一瞬悩んだ後村人に「少し決めるまで時間をくれ」と言った。しかし次の瞬間答えは決まったのだった。「いただきます」と言って腹が減っていたので肉にがっついた。しかし次にスープを飲もうとすると(これってまさか)「この土器ってもしかして縄で模様をいれてたりする?」
「当たり前だべ。今時縄で模様入れない土器なんて聞いたことねぇべ」とまた鼻で笑われて少々気に食わなかったがこれである推測がたった。(何らかの理由で縄文時代にタイムスリップしてしまったのではないかと、縄文土器や竪穴式住居から考えて古き良きってレベルではなく本当に縄文時代なのではないかと)そう考えたのだ。そして、まずは後で行動を起こそうとまずは、猛スピードでスープと肉を口に放り込んだ。「ゴホッゴホッ」「そんなに急いで食べなくても誰も取らねぇべ。」と村人になだめられるが全て飲み込み