「望月。カカオ、ちょっともらっていい?」
隣で、口元に抹茶のソフトクリームをつけたまま松岡くんがそう言った。
「あっ、うん……。はい」
わたしは、松岡くんの口元にカカオソフトを近づける。
「ありがと」
松岡くんは、わたしの舐めた部分のソフトクリームをぺろりと舐めた。
「へえー、カカオもいけるじゃん」
「輝美も、もらいなよ」
花乃が、耳元でそう囁いて来た。
で、でも待って……。
今頃気づいたんだけど、わたしのソフトクリームを松岡くんが舐めるって、間接キスだよね……?
わたしがずっと黙っていると。
「どうしたの? 輝美、抹茶味のも食べたくなったの?」
さっきのニヤニヤしていた表情から一変。花乃は、不思議そうな顔をしてわたしにそう聞いてきた。
あまりにも演技がうまくて、さっきまでのことがなかったかのようになっている。
おそるべし、演劇部員。
「あっ、じゃあ食べるか?」
松岡くん、抹茶のソフトクリームをわたしに差し出してる……!
「あー、俺が舐めたやつだとあれか……」
「う、ううんっ!」
あんまりわたしが黙ったままだから、松岡くんが不安そうな顔をしたので、思わず声が大きくなっちゃった。
「じゃ、じゃあ……。わたしは松岡くんの抹茶ちょっともらっていい?」
わたしは差し出された、落ち着きのある緑色のソフトクリームを舐める。
甘くて冷たくて、苦くて大人っぽい。
そんな味がする。
カカオとはまた違う、ほろ苦くて大人っぽい味だった。



