「大丈夫よ」

「着ろ」

「平気よ」

「着ておけ」

遠慮する藍に、如月刑事は上着を強引に着せる。上着はとても温かい。

「雨、だいぶ強くなってきましたね〜」

原刑事が外を見ながらスマホを開ける。外の風と雨はさっきより激しさを増していた。

「えっ!?」

原刑事がスマホの電源を付けたまま、藍と如月刑事を見つめる。

「台風の影響で、電車が止まったらしいです。高速道路も封鎖されたって……」

「えっ!?」

藍と如月刑事は同時に言った。



午後十時。小さなホテルの一室。藍と如月刑事は離れて座っていた。

電車でも車でも帰ることができず、藍と如月刑事はホテルに泊まることにしたのだ。

しかし、どこのホテルも満室でやっと空きがあったと思えば、一室しか空いていなかったのだ。しかし、車中泊よりはいいだろうと藍は思い泊まることにした。ちなみにベッドは一つしかない。

「藍、明日も早い。そろそろ寝た方がいいだろう」

テレビを見ていた如月刑事がそう言い、藍は本から顔を上げる。

「そうね……」