「で、そんな妄想をしながら二度寝で遅刻と」


はぁ、とため息混じりで言うのは私の親友ルリ。


私と違って、ザ・クールビューティーでしかも可愛い一面も持ってる。


女の子の私でも時折キュンとさせられることがあります。


しかし、今はそんなルリが鬼の形相で私にお説教タイム。遅刻した日の昼休みは4時間目から恐怖でいっぱいです。


「カナね。もう二年生なんだからいい加減その妄想癖直しな」


「だって」


「だってじゃありません。普通に恋愛すればいいじゃない」


「ううう」


それが簡単にできるなら苦労はないよ。


こんな時の私の決まり文句はもう決まっている。


「妄想こそが最強だもん。恋愛なんて結局緊張して何も喋れなくてそれで自然消滅で終わるだけだし」


実体験済みなのである。小学生の時に一回だけ付き合った時がある。


でもその時は、付き合ってから全く喋ることができなかった。その無言タイムが2ヶ月続いた日に卒業。


学校は別になりそれ以降、町で偶然再会したなんてこともない。


あの時の私に何往復ビンタすれば気が済むのかはわからない。


こうして小学校における苦い初恋を終えた私は自分の勇気のなさを盾に妄想にふけることとなったのだ。


「あっっっそ」


超冷たくあしらわれる。泣いちゃいそう。


「で、問題はこっからよ」


「ほえ?」


「妄想の相手よ。実在の人物なんでしょ」


そんな歴史上の人物をみたいな言い方をしないでも


周りの様子を確認し、近くには誰もいないこと、教室内がいい感じにうるさいことを把握。


「園田君、今ルリが座ってる席にいる。最近係の仕事で一緒になることが多かったから」


「デスネヨー」


ルリは感情を失った声でそう受け答えする。


私、前島カナは男子との関わりが少なすぎてちょっとでも親密になるとその人が好きになってしまう質なのである。