その能力を私も受け継いでか幼少から記憶は得意なほうでテストなんかでは随分お世話になったものだ。
(おんばっちゃが勢いに任せてそういう言葉を実際に発したかもしれねべさ。)という言葉を飲み込んで私は母に冷静に告げた。
「いずれにせよ。ぶっきらぼうにただお金をつかみ取ったという無礼におばあちゃんは怒っているんだよ。だはんでおばあちゃんさ謝らねばまいねな。」
母の表情に得心の様子は窺えない。祖母が畳み掛ける。
「あんだの機嫌が悪ぐなるのは、お金が無ぐなった時なんだ。」
そう。このような事件は今に始まったことではない。『金の切れ目が機嫌の切れ目』の母が繰り返し起こしてきたことだ。金欠になると決まって機嫌が悪くなるのは、趣味の一つである買い物(ディスカウントショップ、コンビニ等)ができなくなる不便さと自由の制限にあるのが直接的可視的な原因だろうが、根本的なものは母の大阪での結婚生活に遡るのかもしれない。それまで宮城県名取市で平凡な生活を送っていた亡夫と母が突然大阪へ引っ越すことになり、しばしば金銭的不足に悩まされていたらしい。その度に当時名古屋に住んでいた祖母が大阪へ向かい給付を行うと共に身辺の世話も行っていた。その当時から今に至る母の浪費癖(お金を持つ途端に使いたくなる癖)があったと祖母は回顧するが、放蕩癖のあった亡夫に金銭面等で悩まされ結果的に精神を病んだ母であるから、金欠が非常のトラウマとなって母を襲うという面もあるかもしれない。とまれ、金が母の病気と深い関係にあろうことは今思えば容易に想像できる。
さて、本線に戻ろう。祖母に指摘を受けた母は果たして図星だった。
「うん。そうなんだよね・・・。」
と苦笑せざるを得ない。しかし私には、この時の母の案外素直な様子が意外に映った。第一、母が祖母の言うことを素直に認めるという態度自体が稀なのだ。祖母の指摘を正直に認めたゆえか、祖母の機嫌が収まるまでおきまりの不平不満を聞き続けなければならない(もっとも真剣に聞く気なぞ母には一向なかろうが、)祖母の機嫌を少しでも直し苦行の会議を早期に終息させるための小芝居かは私には判別できなかったが、前者のほうかもしれないと直感的に感じられた。そもそも幾度となく指摘されている事実なのだから、母に反論の余地なぞ初めからないのだし。
(おんばっちゃが勢いに任せてそういう言葉を実際に発したかもしれねべさ。)という言葉を飲み込んで私は母に冷静に告げた。
「いずれにせよ。ぶっきらぼうにただお金をつかみ取ったという無礼におばあちゃんは怒っているんだよ。だはんでおばあちゃんさ謝らねばまいねな。」
母の表情に得心の様子は窺えない。祖母が畳み掛ける。
「あんだの機嫌が悪ぐなるのは、お金が無ぐなった時なんだ。」
そう。このような事件は今に始まったことではない。『金の切れ目が機嫌の切れ目』の母が繰り返し起こしてきたことだ。金欠になると決まって機嫌が悪くなるのは、趣味の一つである買い物(ディスカウントショップ、コンビニ等)ができなくなる不便さと自由の制限にあるのが直接的可視的な原因だろうが、根本的なものは母の大阪での結婚生活に遡るのかもしれない。それまで宮城県名取市で平凡な生活を送っていた亡夫と母が突然大阪へ引っ越すことになり、しばしば金銭的不足に悩まされていたらしい。その度に当時名古屋に住んでいた祖母が大阪へ向かい給付を行うと共に身辺の世話も行っていた。その当時から今に至る母の浪費癖(お金を持つ途端に使いたくなる癖)があったと祖母は回顧するが、放蕩癖のあった亡夫に金銭面等で悩まされ結果的に精神を病んだ母であるから、金欠が非常のトラウマとなって母を襲うという面もあるかもしれない。とまれ、金が母の病気と深い関係にあろうことは今思えば容易に想像できる。
さて、本線に戻ろう。祖母に指摘を受けた母は果たして図星だった。
「うん。そうなんだよね・・・。」
と苦笑せざるを得ない。しかし私には、この時の母の案外素直な様子が意外に映った。第一、母が祖母の言うことを素直に認めるという態度自体が稀なのだ。祖母の指摘を正直に認めたゆえか、祖母の機嫌が収まるまでおきまりの不平不満を聞き続けなければならない(もっとも真剣に聞く気なぞ母には一向なかろうが、)祖母の機嫌を少しでも直し苦行の会議を早期に終息させるための小芝居かは私には判別できなかったが、前者のほうかもしれないと直感的に感じられた。そもそも幾度となく指摘されている事実なのだから、母に反論の余地なぞ初めからないのだし。
