我が家には隣に空き地があって後半分は祖母がきゅうり、マスカット、イチゴ、ミニトマト等野菜・果物・花卉類を植えている。前半分は砂利を敷き詰め私の車置き場として利用している。２台分のスペースがあるので、空きスペースは来客者が駐車したり、方向転換するために設けている。
　ここ数日雪は積もりに積もった。雨ざらしの屋外駐車場に停めてある私のOld Clunker（中古のスターレット）にも容赦なく雪は覆い被さっていた。祖母との冷戦突入直後、気分転換にとカセットテープ用ウォークマンを持ち出し、ウィットに富み芸術的センス抜群の陽気な遠山先生と可愛らしい声を持ち感情表現の豊かなKatie、冷静沈着で渋い声、Katieと好対照ながら茶目っ気がありノリの良いJerryの三人が織り成す素敵な十五分。ラジオ英会話入門（当時）の録音などを聴きながら雪片付けを行っている最中に見つけたのが私の愛車だった。
　数日雪下ろしをしないだけでこうも積もるものかと、青森の雪には慣れているはずの私でも正直驚いた。早速救出にかかったが、車のほぼ全体が雪に埋没した格好で、前にも後ろにも雪が詰まり思うようにはかどらない。まず周りの雪をどかさないことには車の雪を下ろすにも下ろせないと悟った私は作戦を変更することにした。
　とりあえず運転席側の雪を除いてドアをこじ開け多少強引に車内へ滑り込む。エンジンをかけエアコンの温度調節つまみを最高温度に回してスイッチを入れる。冷え切った車内が徐々に温かくなってきた。それから、ギアをバックに入れ静かにアクセルを踏み込んでいく。車が後退し始める。車が駐車場外に出たら今度はギアをドライブに入れハンドルを若干右に回し駐車場内へ前進させる。このようにして徐々に駐車場内の雪を踏み固めていこうという魂胆だ。雪が積もって山のようになってしまった駐車場の地面を先にならす必要があったのである。こうして駐車場内を前後左右に往復しているうちに段々気分が乗ってきた。bumpy(デコボコ)な道を走るオフロード車のような感覚に興奮したり、祖母との冷戦でフラストレーションも溜まっていたのでアクセルを踏む足にもいきおい力が入っていた。
　と、その時である。真面目に雪かきをせず車を使って半ば強引に雪を踏み固めていた私の横着に神からのみしらせ（天罰）が下ったのであろうか、車が急に立ち往生してしまった。