だが、用事のある時は起こされて当然なのだし、そういう場合は遠慮なく起こしてくれと私も折に触れて祖母に伝えてきたのであるが、それは私の怠惰癖を直す根本解決にはならない。また、祖母の怒りには別の理由があった。
「雪が積もっても片付けねんでずっとそのままだべ。」
前夜から降り積もっている玄関前の雪を気に病んでいたのだ。数年前なら初めから私なぞに頼らず祖母一人でさっさと片付けていたろうが、体力的衰えと痛めた腰の影響で自由に雪かきができなくなっていた。。何しろ八十も後半にさしかかる年齢なのだ。自分が動けない悔しさ、情けなさ、歯がゆさを感じていたに違いない。
雪のことは前夜から頭にあったが、空腹でどうにかなりそうだった私は、
「飯食ったらやるはんでいいべや。」
と強い口調で返した。とにかくご飯が先決だった。今は祖母と口論するだけのエナジーが絶対的に不足していたのだ。だが反面祖母のボルテージは上がる一方だった。
「飯食ったらやるはんでいいででないべ。近所の人だぢはみんな午前中にやってまってるんだはんで午前中にやらねばまいねっきゃ。」
(お説教は後で聞くはんで先に飯食わせでけじゃ。)と言うわけにもいかず、感情が臨界状態に達しつつあった私は不満をぶちまけるように言い放った。
「せば今度からは下に寝て早めに起きるようにするはんで!」
「ちゃんとベッドさ寝て起きられるようにしねばまいねっきゃ。下のソファは寝床でねえんだはんで!」
ここまで理路整然とやられると、もともと討論が苦手な私にはこれ以上切り返すすべがない。初めから水掛け論であったし、何よりタイミングが最悪であった。理性を完全に失った私に残された道は暴走しかない。
「上で寝れば起きれねえはんで下で寝るって言っちゅうんだべ!!」
私の声は絶叫になっていた。
突然の暴発にさすがの祖母も面食らったらしい。驚いた口調でこう言う。
「何もそんなに怒鳴らなくてもいいっきゃ。おばあちゃんそんなに怒ってるかして。」
むしろこちらが驚かされた。あれだけ人を鋭く注意しておきながら自分は怒っていないとでも言うつもりか。私の叫びは収まらない。
「いつも怒っちゅうべや!」
実のところ、祖母が母と私に怒りをぶつける頻度が、このところ多くなっていたのが私の実感である。
「雪が積もっても片付けねんでずっとそのままだべ。」
前夜から降り積もっている玄関前の雪を気に病んでいたのだ。数年前なら初めから私なぞに頼らず祖母一人でさっさと片付けていたろうが、体力的衰えと痛めた腰の影響で自由に雪かきができなくなっていた。。何しろ八十も後半にさしかかる年齢なのだ。自分が動けない悔しさ、情けなさ、歯がゆさを感じていたに違いない。
雪のことは前夜から頭にあったが、空腹でどうにかなりそうだった私は、
「飯食ったらやるはんでいいべや。」
と強い口調で返した。とにかくご飯が先決だった。今は祖母と口論するだけのエナジーが絶対的に不足していたのだ。だが反面祖母のボルテージは上がる一方だった。
「飯食ったらやるはんでいいででないべ。近所の人だぢはみんな午前中にやってまってるんだはんで午前中にやらねばまいねっきゃ。」
(お説教は後で聞くはんで先に飯食わせでけじゃ。)と言うわけにもいかず、感情が臨界状態に達しつつあった私は不満をぶちまけるように言い放った。
「せば今度からは下に寝て早めに起きるようにするはんで!」
「ちゃんとベッドさ寝て起きられるようにしねばまいねっきゃ。下のソファは寝床でねえんだはんで!」
ここまで理路整然とやられると、もともと討論が苦手な私にはこれ以上切り返すすべがない。初めから水掛け論であったし、何よりタイミングが最悪であった。理性を完全に失った私に残された道は暴走しかない。
「上で寝れば起きれねえはんで下で寝るって言っちゅうんだべ!!」
私の声は絶叫になっていた。
突然の暴発にさすがの祖母も面食らったらしい。驚いた口調でこう言う。
「何もそんなに怒鳴らなくてもいいっきゃ。おばあちゃんそんなに怒ってるかして。」
むしろこちらが驚かされた。あれだけ人を鋭く注意しておきながら自分は怒っていないとでも言うつもりか。私の叫びは収まらない。
「いつも怒っちゅうべや!」
実のところ、祖母が母と私に怒りをぶつける頻度が、このところ多くなっていたのが私の実感である。
