「彰人君、おはよう!」

「寧々、中学卒業おめでとう。
卒業式、来れなくてごめんな。」

「いいよ。
初めから分かっていたことでしょう!
だから今日の旅行に、連れて行って貰えるんだもん。」

そう。

卒業式当日俺は、出張でアメリカにいた。

普段は、兄貴と洋介が行くんだが………

寧々の卒業式に参加したい二人は、大人げないことに

俺と会長の長男を組み合わせた。

あまり話さないよう、距離を取っている長男との出張だけでも

憂鬱なのに………

寧々の卒業式に出れないとは、最悪だ。

おまけに、出張中ずっと寧々の事を根掘り葉掘り聞かれ

辟易した。

会長は、仕事につくことになった時から警戒している人だ。

腹違いの俺を、邪魔にすることなく

受け入れてくれる、懐の深さと

誰もが安心する人の良い笑顔を携えているが………。

実はとても腹の中が黒いんだ。

策士と言っても良い程頭も切れ

決して弱味を握られたくない男なのだ。

そんな長男との出張で、寧々の事をあれこれ聞かれては

警戒しまくりだ。

別れるとき

「未成年だと覚えておけよ。
まぁ、多少の事は揉み消してやるから
安心して行動しろ。」と

なんとも物騒な会話をされた。