そんな時、俺の所に父親だと名乗る男が訪ねてきた。

直ぐに園長室に呼ばれ

『お父さんが迎えに来てくれたよ。
良かったね!
さぁ、荷物の整理を先生と一緒にしておいで。』と言われた。

男は………

『全て、うちで新しい物を用意しましたから
荷物は、こちらで処分して下さい。』といい

着の身着のままの俺を、連れて行こうとした。

『お母さんのお骨を………』と言われると

渋々受け取り

手続きを済ませると、サッサと車に乗せられた。

施設には、特別思い入れもなく友達もいなかった為

挨拶もなく去ることに、心残りはなかったが………

ただ一つあるとしたら、唯一の心の拠り所だったクマのぬいぐるみだ。

出来るなら、アイツだけは連れて行きたいと思った。




自宅につく前に、途中一度だけ立ち寄ったのが

小高い山の上にある、古びたお寺だった。

そこで、母のお骨を取り上げられ『お墓に入れる』と言われた。

子供心に、お骨はお墓に入れるものだと分かっていたから。

悲しみや怒りはなく

『ここに入れるんだ。』と納得した。

帰りの車で、唯一俺に話しかけた言葉は…………

『これから新しいお母さんに逢う。
だから、お墓の母親のことは忘れろ!』と………。