一度は、恋だと思った咲。

でも今なら分かる。

同じ悲しみをもった、同志だったんだと。

咲が求めていたのは、傷を舐め合う仲間じゃない。

安心出来る居場所だったんだと。

「寧々が指しゃぶりしている。
それって…………いけないことじゃないのか?」

「ごめんなさい。
私が間違ってた。」

そう謝ったのは、彩ちゃんだった。

「幼稚園でいう指しゃぶりは、淋しかったり退屈だった時におこるの。
寧々ちゃんの指の吸いダコを見たとき
赤くなっていたから、ずっとしてると思ったの。
もちろん、今もしているはずだけど。
その気持ちが、安心する居場所が出来たからだとは………思わなかった。
一般的なことしか、見えてなかった。」

仕方ないよ。

普通に育ってたら、そう感じるはずだ。

「彩ちゃんが気づいてくれたから
寧々の気持ちを考えることができたよ。
ホントに有り難いと思ってる。
俺や洋介は、ずっと一緒にいたのに………
指しゃぶりをしていたなんて、全く気づかなかったんだから。」

「そんなもんなんだろうな。
俺は、咲の望むことも悲しみも気づけなかった。
咲が自分で感じて、考えただけで。
ホントは何もしてやってないんだ。
彰人だって、勝手に連れ出したけど
それが正解かどうかなんて、俺には分からないもんな。」

そう兄貴が言って笑った。