「寧々、帰るから上着を着ろ。」

一週間もすると、『寧々ちゃん』と呼ぶのも面倒になり

『寧々』と呼んでいる。

すっかり俺に慣れた彼女は

「ねねちゃ~ん」と

日に何度も顔を出す洋介よりも俺になつき

洋介を拗ねらせている。




今日は、久しぶりに兄貴と咲の家に遊びに行く。

寧々の噂を兄貴から聞いた咲が

『逢いたい!!』と騒いだ為だ。

俺に慣れた今なら、出掛けても大丈夫だろう。

「寧々、お姉ちゃんとおじさんのお家に行く前に
ケーキ屋さんに寄るけど
好きなケーキってあるか?」

俺は、兄貴達の家に引き取られるまで

ケーキ屋さんのケーキを食べたことはなかった。

あるのは、母親が作ってくれたホットケーキくらいだ。

それが、誕生日ケーキで………

俺のご馳走だったんだ。

咲も、3歳までは双子の妹の咲々ちゃんと一緒に

お祝いしてもらって、ケーキを食べてたらしいが。

妹の病気が分かってからは

妹は病院でご両親と一緒にお祝いしていたようだが。

いつも一人で留守番の咲は

食べることも、祝うこともなかったと言っていた。

今は、幼稚園の先生達や兄貴と祝い

沢山食べているが

毎回ホントに嬉しそうだ。