「あ…香奈さん…」
「ごめん、寝てた?」
「いや…ちょっとうとうとしてて…」
「この部屋日当たり良くてぽかぽか
してるからかな?
それとも、この機械の音?
不謹慎だけど、静かな病室でこの音
聞いてたらちょっと眠くなるのよね」
棚の上にある花瓶に花を飾りながら
香奈さんは笑った。
「雪ちゃん、この前はごめんね?」
「え?」
「取り乱しちゃって、
みっともないとこ見られちゃったね」
「いえ…あの、大丈夫なんですか?
光輝に会いに来て」
「もう落ち着いたから大丈夫。
気持ちは変わってないけど…
いつまでもうじうじしてたら
光輝に申し訳ないしね」
「そうですか」
「それより…あたしは雪ちゃんが心配」
花をいじる香奈さんは雪を見た。
「仕事に身が入ってないし、顔色悪いし。
食事もちゃんととってないんでしょ?
宮さんが心配してた」
うつむく雪。
「光太に聞いた…
脳死を受け入れられないって。
でもね?雪ちゃん。
もう仕方ないことだし、
どうにもならないのよ?」



