あの子は花。
一輪の花。
苦悩と葛藤に頭を抱えながら、
一生懸命に生きて、
そして、青空に散っていった。
悲しくても、辛くても、笑う。
本当の気持ちは言わずに笑う。
声を持たない、何も話せない
花のように、
青空の下で、精一杯に。
"弱さ"を見せないことは
"強さ"というのか。
その答えは分からない。
ある日、あの子は思い立ち、
高い建物の屋上へ立った。
最後に何を思ったか。
青空に何を見ていたか。
それは、あの子にしか
分からないこと。
柵を乗りこえ、
見上げた青空は
雲ひとつない綺麗な空。
あの子が生きた軌跡は、
誰かの記憶に残るだろう。
この世界に生まれ出て、
短い命を終えるまでのこと。
誰に愛されて、
どう生きたのかということ。
もう、あの子は
この世界のどこにもいないけど、
思い出の断片を知る人がいる。
あの子を泣いて抱きしめた両親、
あの子と昔よく遊んでいた友人、
あの子と言葉を交わしたクラスメイト。
あの子の思い出の中にいた人たちがいる。
そして、時計の針は時を刻む。
あの子がいた世界から、
あの子がいなくなった世界へ、
時を刻み続ける。
記憶の花びらを残し、
青空へ向かったあの子。
雲の上からいつもと
変わらない町を眺め、
一体何を思うだろう。
一体何を思うだろう。
