順調に仕事は進んでいき、アレッサンドロさんも「おいしい」と笑ってくれた。カフェもお客さんが結構来てくれるし、嬉しいことばっかりだ。

「すみません!」

「は〜い!」

お客さんに呼ばれ、私がテーブルに向かおうとするとガチャンという音と、「Caldo!(熱い!)」という声が響いた。

振り返ると、アレッサンドロさんの腕に熱い紅茶がかかっている。クラスメートが運んでいた紅茶をかけてしまったらしい。その子は呆然として、真っ青な顔で震えている。

「アレッサンドロさん!!」

私は悲鳴に近い声を上げ、アレッサンドロさんの腕に氷を当てる。私の手が震え、涙がこぼれていた。

「大丈夫ですか?大丈夫ですか?」

私は何度も訊ねる。アレッサンドロさんの腕には火傷ができていた。軽いものだけど、その傷がとても痛々しい。

「大丈夫だよ。泣かないで?」

アレッサンドロさんはそう言いながら、私の頭を優しく撫でる。私は首を横に振り、泣き続けた。