「手伝うから」
そう言って、深見くんはもう一度アンケート用紙に手を伸ばす。
あ、と思ったときにはもうすでに体は動いていて、あろうことか深見くんの手をはしっと掴んで止めてしまっていた。
「いい! ほんとにいい! ひとりでできるっ、深見くんに別に手伝ってもらわなくてもこれくらいできるんだから!」
あ゛────。
反省した傍から、これだ。
もう!もう!!もう!!!
心のなかだけで、がっくりと首からうなだれる。
どうして、素直にかわいく『手伝って?』って言えないのかな。助けてほしいのに、SOSを出せないのかな。
虚勢ばっかりで、大丈夫じゃないのに、大丈夫なふりをすることばっかり上手くなっていく。
「そう、じゃあ、俺は遠慮なく帰るけど」
「……あ、うん、ばいばい」
────なんで、いつも、失敗しちゃうんだろう。
気にしてない、むしろひとりになれてせいせいするって仮面を貼りつけてひらひらと手を振る。深見くんはあっさりと背を向けて図書室の出口の方へ歩いていく。
せっかく、気にかけてくれたのに。
せっかく、手伝うって言ってくれたのに。
せっかく、急いでいること気づいてくれたのに。
深見くんの、あまりにカンペキな後ろ姿が遠ざかっていく、思わず引き留めようと手が伸びかけて────途中で止まって、だらりと落ちた。
引き留めて、それでなんて言うの。どうせ、またかわいくないことしか言えない、つまんないことしか言えないのに。
深見くんはそのまま、一度も振り返らずに、図書室を出ていってしま────わなかった。
「なあんて、嘘だよ」
「へっ?」



