基準値きみのキングダム



深見くんの答えは結局最後まで聞けなかった。

火をつけっぱなしだったフライパンの方から、焦げた匂いが漂ってきたせいで。




「うわっ、忘れてた!」




慌てて駆け寄って、ホットケーキをひっくり返す。


ちょっと……ちょっと、黒い気がするけれど、まだ食べられる。ギリギリセーフだ。




「ごめん、俺のせいだ」

「食べられるから大丈夫だよ」

「焦げたとこ、全部食うから」

「そんなことしなくていい!」




癖で強めになってしまった語尾に、深見くんがくすっと笑う。




「そーいや俺、皿取りにきたんだった。これ使っていい?」




慣れた様子でカップボードを開ける。

深見くんは、もうすっかり我が家のキッチンの配置まで覚えているらしい。



こくり、頷くと、深見くんは皿を4枚取り出した。

深見くんと、奈央と京香と私の分。