基準値きみのキングダム



「……うん」



ぴんとこないまま曖昧に頷くと、深見くんは困ったような顔をして。



「心配してんだけど。ちゃんとわかってる?」

「え」




心配。


久しぶりに聞いた。


私に向かって、その言葉が向けられるのはいつぶりだろう。


ふいにかけられた言葉に、心の奥の奥の奥、固くきゅっと縛ったはずの結び目がゆるむ。


深見くんといると、こういうことがよくあるの。


ほろりと全部、うっかり、こぼしちゃいそうになる。

私でさえ知らない私の全部を、うっかり、深見くんに預けてしまいそうになる。




「なんで、深見くんが私を心配するの?」

「それは、俺が────」