基準値きみのキングダム



「あ……、ありがとう」



もう大丈夫だよ、と深見くんをちらり見上げると、なぜか深見くんは怖い顔をしている。


え……?

怒って、る?



私の視線を受けて、深見くんは「はー……」とため息をついた。




「放置しようとしたろ、火傷」


「え……あ、うん。ほんのちょっと当たっちゃっただけだったし、これくらいいつものことだし。ほら、他にもスライサーで切っちゃったりしたこともあるし、これとか」



傷だらけだ。

お世辞にも綺麗とは言えない手のひら。


深見くんと握手した瞬間が頭のなかによみがえってくる。


すると、とたんに恥ずかしく思えてきて、見せていた手をひっこめようとしたら、深見くんに捕まった。



手首を縫いとめられて、動かせない。



火傷した部分に、深見くんの人さし指がそっと触れる。

ぴりり、とかすかに痛みが走った。





「この手で森下が色んなもの守ってるってわかってる」

「……っ」

「わかってるし、すげえなって思うよ」




思うけどさ、と深見くんは呟いて、私を見下ろした。

深見くんの色素の薄い瞳に、私だけが映っている。




「頼むから、もうちょっと、自分のことも大切にしてくれない? 火傷したり怪我したり、傷つくことに無頓着にならないでよ」