基準値きみのキングダム



表面に小さなぷつぷつの泡が浮かんできた、ふかふかのホットケーキはひっくり返しどき。


フライ返しを構えた、ちょうどそのタイミングで。




「森下」

「わ……っ!? 熱っ」




突然背後に現れた深見くんに、びっくり仰天。


その反動で、指先を熱々のフライパンにぶつけてしまった。


小さく悲鳴を上げて、でもこのくらいよくあることだし何ともない……と思った私の腕を、深見くんが強引に掴んだ。


ちょっと乱暴なくらいの力。




「ひゃっ!?」

「っ、何もたもたしてんの、早く」




シンクに連れて行かれて、袖を捲りあげられる。

深見くんが勢いよく蛇口をひねって、冷水がジャーッと火傷した指先に降りそそぐ。


ただれた痛みが、少し和らいだ。