基準値きみのキングダム



「ふは、森下の手、ちっちゃ。俺の半分くらいじゃない?」

「……半分は言いすぎだよ」




もう逃げる気力は失ってしまった。

大人しく握手していると、近衛くんが「それ、なんの握手?」と聞いてくる。




「んー、やっぱ “仲良しの握手” ?」




深見くんの答えに、じんわり胸が熱くなった。

仲良し……なんだ。
いいのかな、私もそう思っても。

嬉しい、かもしれない。




「つーか、恭介の席どこ」

「1番前のまんなか」

「天皇席じゃん。ウケる、くじ運悪すぎだろ」

「お前なー」




深見くんと近衛くんが軽口を叩き合っている間ずっと、次のチャイムが鳴るまでの間ずっと、離れるタイミングを失った手は繋がったままだった。