基準値きみのキングダム



まさか、そんな提案をされるとは思わなかった。

ていうか、意味がわからない。なんで?



深見くんは戸惑う私に有無を言わさず、近衛くんから奪うように私の手をきゅっと掴んだ。

やっぱり意味がわからない。


それに。




「……っ、やっ」



とっさに振り払うと、深見くんは「なんで逃げんの」と不服そう。



だけど、だって。

汚いんだもん、私の手。



料理や洗濯、水に触れる機会の多い私の手はみっともなく荒れていて、ガサガサでささくれだらけで。


こんなの……女の子の手じゃない。
恥ずかしくて、情けない。




近衛くんに対しては何も思わなかったのに、深見くんはだめだ。

どうしても気になってしまう……のに。




深見くんは容赦なく。

逃げた私の手をすかさず捕らえて、すっぽり包み込んでしまった。