基準値きみのキングダム



「やっぱいーや。責任とらなくていいけど、代わりに、俺とも仲良くして?」



はい握手ー、と近衛くんの手のひらが差し出される。

断る理由も術も思いつかず、訳のわからないままその手のひらを握った。


すると。




「森下」

「!?」




背後から突然声がした。

び……っくりした。心臓止まるかと。




「なんで(むく)と握手してんの」




深見くんがずいっと私と近衛くんの間に割りこんでくる。

突然の深見くんの登場に、まだ口をはくはくさせて動揺する私の代わりに近衛くんが答えた。




「隣の席になったから、よろしくねーって仲良しの握手」

「へー」



まだ私の手を握ったままの近衛くんの手をちらりと見て、深見くんは少し目を細める。




「森下、俺とも握手しよ」

「へっ?!」