基準値きみのキングダム




𓐍
𓈒



昼休みだけじゃない。

放課後も、終礼が終わってチャイムの音が鳴り響くと同時に、深見くんは私の席までやって来る。




「森下。今日は、買い物行く?」

「ええと……」




冷蔵庫の中を思い浮かべる。


卵も牛乳もまだある。野菜も冷凍してある分がまだ残っているけれど……待って、そういえば今日は特売日だった気がする。

それなら、来週の分も前倒しして今日買っておいたほうがお得だよね。




「京香のことを迎えに行って、帰りにスーパーに寄るつもり」

「じゃー、俺も着いてく」




もういちいち驚かなくなってしまった。


買い物をしてから帰ると答えた日には、必ず深見くんが着いてくるようになった。それで、パンパンに膨れ上がった買い物袋を家まで運んでくれるの。



もちろん、最初のうちは毎回しっかり丁重に断っていた。



でも、どれだけ断っても結局深見くんは手を貸してくれる。

押し問答をするだけ無駄だと最近気づいた。




それに、迷惑じゃないんだもん。


深見くんが荷物を持ってくれるおかげで、特売の安い野菜がひとりのときよりも多く買えるし、深見くんに懐いている京香もすっごく喜ぶし……。



正直、助かっていて。


その代わりに、毎度のように奈央が深見くんをうちに上げて、深見くんが我が家でごはんを食べて帰る。


定期的にそれを繰り返すのが、この頃、日常になっていた。