基準値きみのキングダム



深見くんが、私のお弁当箱の中のはんぺんとチーズのミルフィーユを指さす。

はんぺんとスライスチーズを交互に重ねてトースターで焼いただけのおかずだ。



「えっ、だめ!」



とっさに深見くんの箸からお弁当を防御する。

だって。




「これ、昨日の夕ご飯の残りだから……。ていうか、残りものとか余りものしか入ってないから!」

「それのどこがだめなの」



油断した隙に、ひょいとつまんで深見くんが口に放りこんでしまう。

あああ……そんな手抜き料理、自分で食べるからいいだけで、誰かの口に入れるにはお粗末すぎるのに。



「やっぱ、美味」



なぜか深見くんは嬉しそうににこにこ笑う。




「森下の作る料理、好きだわ」

「それはどうも……」