基準値きみのキングダム


𓐍
𓈒



『森下に話しかけるの、やめないんで』



その宣言通り、深見くんは本当にぐいぐいと距離を詰めてきた。

たとえば、昼休み。




「森下、何食ってんの? 弁当?」

「な、なんでこっち来るの……!」

「え、駄目?」

「だめ、ではないけど……っ」




わざわざ、こんな教室のすみっこに来る必要ない。

そんなことしなくたって、深見くんには一緒にお昼を食べる友達がたくさんいるはずだ。



「ん、駄目じゃないならいいじゃん」




陽キャ、怖い。
深見くんって、やっぱりチャラい。


からかわれているんだろうな、きっと。


頭ではちゃんとわかっているのに、近づいてくる深見くんを振り払うことはなぜかできずにいた。