基準値きみのキングダム



一瞬、固まってしまう。



「卑屈になってなんか……」

「ふは、なってんだよ。じゃなきゃ、話しただけで価値下がるとか言わないから」

「それは、事実だからだよ。……私、“鉄仮面” だし」

「テツカメン?」

「何をしても顔色ひとつ変えないから、面白くない、つまらない、人間味がないって、みんなそう言う。私も納得、してる」




なんで、こんな話、深見くんにしているんだろう。

いちばん遠い場所にいるひとなのに。




「“みんな” って言うけどさ、それってほんとうにみんな?」

「へっ?」

「少なくとも、俺はその “みんな” の中に入ってねーな」




ふ、と口角を上げた深見くんは、私の拘束を解いた。

それから、なぜかその場に跪く。

それは、ほんものの王子様のような所作で。