基準値きみのキングダム



「どこがおかしいんだよ」

「っ、おかしいよっ。だいたい、私に話しかけたって、深見くんにはデメリットしかないのに」

「デメリット?」

「私と話すと、深見くんの価値が、下が────」




下がる、と続けようとした言葉は途中で泡になって消えた。


深見くんがわたしの手を捕まえている方とは反対の手のひらで、やわらかく私の口を覆ったから。




「下がんねーよ」

「……っ」

「つか、そんなくだらないことで下がる価値なんかどうでもいーし。それより無視される方が、普通に傷つくんだけど?」




じっと私を見つめてくる。
もしかして……ちょっと、怒ってる?

ちょっとというか……これは、かなり。




「森下はさ、なんでそんな卑屈になってんの」

「え」