基準値きみのキングダム


𓐍
𓈒



「あ、杏ちゃん帰ってきたー! ねえねえ、杏ちゃん、アイス食べてもいいっ?」


部屋に戻ると、にこにこ笑顔の京香がアイスを催促してきた。

そうだ、アイス買ってたんだった。



「いいよ。奈央にも持って行ってあげて」

「うんっ! なーくん、アイスのお時間ですよおっ、なーくんはチョコだよっ」

「え、アイス?」



奈央が目を見開く。


食後のデザートが久しぶりだからだよね。わかりやすく目が輝く奈央に、ああアイスくらい毎日買ってあげられたらな……と思う。



「姉ちゃんの分は?」

「えっ? あー……私はいいよ。ダイエット中だし」



首を横にふると奈央は目を細める。



「嘘じゃん」

「嘘なんかじゃ……」

「ほら、半分食えって」



奈央が半分になったアイスを渡してくる。
うう、年々奈央は鋭くなるな。そして、なんだかんだ優しい。

奈央のおすそわけのアイスをすくって、口に運ぼうとしたタイミングで。



「で、結局、恭介くんは姉ちゃんの彼氏じゃねえの?」

「っ?!」

「っぶね、アイス落とすなよ。床べたべたになる」

「誰のせいだと!!」



奈央が変なことを言うからじゃん……!



「ありえないよ。深見くんは……ただの、普通の、クラスメイトだよ。話したこともほとんどないし、ていうかちゃんと話したのだって今日がはじめてだし!」


「へえ? 姉ちゃんとお似合いだと思ったけど」


「っ、そんなわけない! 不釣り合いにもほどがあるっていうか、隣に並べるのもおこがましいくらいなの……! 住む世界がちがうっていうか、深見くんは、王子様だから────」