♥
𓐍
𓈒
「ごめんね、パパが引き留めたせいで、帰り遅くなっちゃって……」
「んーん、全然」
あのあとも、杏奈の父さんと時間を忘れていろいろ話して、気づけば夜も深まっていた。
俺が帰るとき、杏奈はいつも階段のところまで見送りに来てくれる。
別に玄関まででいいのに、と思うけど、とことこと着いてきてくれるのがあんまりかわいいから、そのままなにも言わずにいる。
「でも、緊張した、でしょ」
「そりゃー……まあ」
さすがにバレてるか、と苦笑する。
緊張しないわけがない。
“彼女の父親に挨拶” なんてシチュエーション。
だって、嫌われたくないじゃん。
好かれたいじゃん、ちょっとでも。
「でも、会えてよかったし、話せてよかった」



