無意識の癖だろうか、右手で左手薬指にふれて、銀色の指輪をくるりと回しながら、ぽつぽつと話す。
「あーんなに小さかった杏奈が、気づけばいつの間にか、きみみたいな男に出会って恋をして、こうやって紹介してくれる歳になったんだなって。立派に成長してくれたけれど、俺は……その間、杏奈になにか与えてやれたかなって」
自嘲気味な笑みには、後悔がにじんでいる。
「うちによく来ているなら、恭介くんもわかるだろう? 俺は、家を空けてばかりなんだ。昔からだよ。親のくせに杏奈には甘えてばかりでさ、寂しい思いをさせて、そしたら……杏奈は、いつの間にか甘えることをしない強がりな子になってしまって」
ありがとう、となぜか杏奈の父さんはそう言った。
「え」
「寂しがり屋なあの子のそばにいてくれてありがとう。杏奈は、強い子だと勘違いされやすいけれど……きみになら、たぶん違うんだろうな。肩の力を抜ける、唯一の甘えられる場所になってくれて、ありがとう」



