「杏奈に、彼氏……」
ぽつりと呟く、その声色があんまり寂しそうだったから。
「……すみません」
思わず頭を下げると、杏奈の父さんは慌てたように顔を上げた。
「ああ違うんだ。最初に否定しておくけれど、僕はきみ……恭介くんを認めないとか、うちの娘はやらないとか、そういうつもりは全くない」
「そう、なんですか?」
「見れば、わかるからね。奈央も京香も、恭介くんを慕っているみたいだし、普段から良くしてくれているんだろう。なにより、杏奈が選んだのならそれがすべてだよ。……まあ、思ったよりかっこいい男だからびっくりしたし、そういう意味ではちょっと心配だけど」
別れろとかそういう野暮は言うつもりないから安心して、と杏奈の父さんが小さく笑った。
「……ただ」
「……?」
「……いや、ただ、娘の成長は早いものだなあと思ってさ」



