♥
𓐍
𓈒
「パパ、帰ってくるのは明日になるって」
「うん、その予定だったんだけどね。できるだけ早くと思って仕事片付けてたら、1日巻けてさ」
顔はあまり似ていない。
どちらかといえば、奈央に似ている。
でも、眉の形や鼻のカーブといった細かい部分で、それからなによりもまとう雰囲気がそっくりで、ああ杏奈の父さんだな、と納得した。
「パパ、夕ごはんはまだだよね。持ってくるね」
「おお、ありがとう」
「そうだ、ミョウガも漬けてあるの」
「ほんとかっ? いつもありがとう、嬉しいよ」
「じゃあ準備するね。京香も手伝ってくれる?」
うん! と勢いよく返事した京香と連れ立って、杏奈はキッチンへと向かった。
「じゃあその間に俺は風呂でも」と奈央も消えてしまう。
リビング、残されたのは俺と杏奈の父さんのふたりきり。
急に空気が重たくなって、気まずさに耐えていると、突然杏奈の父さんががっくりとうなだれた。



