基準値きみのキングダム




「いやそれくらい自分で────」




立ち上がろうとした奈央より先に、杏奈がキッチンへと向かう。


こういうときだけ妙に動きが早くて、そんな杏奈に奈央が苦笑した。


と、そのタイミングで玄関の方から、なにやら音がする。




ガチャガチャ、と鍵を回す音。





「……?」





首を傾げる俺、眉をひそめる奈央。


京香だけ、「お客さんかなっ?!」とぱあっと顔を明るくして、とてとてと駆けだした。


慌てて奈央とふたり、京香を追いかけて玄関まで向かったら。




「ただいまー!」




目の前で、勢いよく扉が開く。


京香が目をまあるく見開いて、それから、現れたその人を視界に入れるなり、キラキラと瞳を輝かせて。





「パパっ!」