基準値きみのキングダム



────入り浸りすぎている。


大学の近くでひとり暮らしをはじめて、高校生の頃より簡単には立ち寄れなくなったはずなのに、時間をかけてまでわざわざかなりの頻度でここに来ている。



だって、仕方ねえじゃん。
杏奈がかわいいのが悪い。





「それ、なに作ってんの?」

「これはね、ミョウガの甘酢漬け……。今のうちに作り置きしておこうと思って」




杏奈はビニール袋にミョウガと塩麹、砂糖、お酢をぽいぽいと手慣れたように入れていく。



「手伝う」と申し出ると、すでに中身の入ったビニール袋を手渡された。

これをよく揉み込むらしい。

見よう見まねでミョウガ入りの袋に指を沈めながら、ふと気になったことを尋ねる。




「量、けっこう多くね?」