「さすがに俺、大学生だしな。文系教科なら杏奈の方ができると思うけど」
この冬に高校受験をひかえている奈央は、ここのところ、いつ見ても問題集を真剣に解いている。やると決めたらやる、真面目で手を抜かないところは、杏奈に似ている。
それ以外の部分は、わりと正反対だと思うけれど。
「恭介くん、ここは」
「“仮定より” でいい」
最近は、そんな奈央の家庭教師的存在になりつつあった。
別に、頼まれたわけじゃない。
なんつうか、自然に。
奈央が勉強している横にたまたま俺がいて、翌日学校で先生に質問しに行くよりも俺に聞いた方が早いから。
そう、自覚は、ある。
────俺は、たぶん、ていうか絶対、森下家に入り浸りすぎている。



