基準値きみのキングダム



「っ、間違えた?」

「いや、どこに座ってもいいけど。寂しいなーって」



恭介は私を甘ったるく見つめて。



「こっちおいで」




とんとん、とベッドの上、自分の隣のスペースを示す。

こくりと頷いて素直に移動して、腰を下ろせば、恭介は満足そうに笑った。




「そういえば、聞いてなかったけどさ。それ、なにに使うかもう決めてんの?」




恭介が指したのは、私の手のなかにある茶封筒。




「ええと……、奈央の新しい運動靴と、京香の文房具と、それからパパの誕生日のお祝いと……」

「杏奈らしいな」


「そうかな」

「うん。そういうところが────」




恭介がふいに、こっちをじっと見つめる。

わ、近い。